Tuesday, October 16, 2007

ジャドソン・チャーチのメンバーたち

もう一つ、ケイに訊きたいことがある。彼女がアメリカに渡った時の、向こうのダンスの状況だ。
「ケイさんがニューヨークに着いた頃は、ジャドソン・チャーチのメンバーはまだ活動していましたか?」「やっていましたよ。イヴォンヌ・レイナーとかトリシャ・ブラウン、それにデヴィット・ゴードンにデボラ・ヘイ。みんな美術館でもギャラリーでも、スペースがあればどこにでも集まって。トリシャ・ブラウンなんか屋上に上って、ビルからビルへ信号を送り、次々と踊りをこう変えてゆくんです」と上体で演技してみせる。「ああ、あの有名なのをね、観たんですか!」とからだを乗り出す。それは『メン・ウォーキング・オブ・ザ・ビルディング』(1969)のことだ。ビルの屋上だけでなく、ロープで吊るされたダンサーがビルの外壁を横歩きしたりもする。ほとんでダンスからパフォーマンスに移動する典型的な作品なのだ。

ジャドソン・チャーチだけでなくグランド・ユニオンの話も出てくるし、また、デヴィッド・ゴードンのジーンズとスニーカーでの踊りも、スティーヴ・バクストンのコンタクト・インプロビゼーションも話題になる。

「ところで、イヴォンヌ・レイーのことだけど、彼女だけはよく分からないんだけど、どういう人?」ケイはなんとなく真剣な顔になって「う〜ん、彼女はすごく変わった人なんですよ。確かにあまり紹介されてないようね。最初のジャドソン・チャーチから中心的に動いた人なんです。情緒的でない、ちょっと普通のダンスとは違った、単純な動きの中にー ああ、ちょうど彼女の本がありますので送りましょう」。
それは有り難い。彼女は確かルシンダ・チャルズといっしょに作品を作ったりしていたようだ。要するにその後のミニマリズムの先駆者なのかもしれない。
「じゃ、ケイさんが向こうに渡って2年ほどしてデビュー頃は、ミニマリズムの時代ですか?」「そうそう、ルシンダ・チャルズとか、ローラ・ディーンとか。それにトワイラ・サープ、ああ、メレディス・モンクも踊っていたわ」。「え? あのメレディス・モンクが踊っていたんですか? ぼくは彼女はボイス・パフォーマーだとばかり思っていましたが」「彼女は最初ダンサーだったの。それからアメリカン・インディアンの発声法を学んで、その技術を使ってオペラを創ったんです」。
私はルシンダ・チャイルズがフィリップ・グラスの音に乗って、分節しながら華麗に踊りつづけたロバート・ウィルソンのオペラ『海辺のアインシュタイン』といっしょに、メレディス・モンクの観客の目と耳を惹き付けて離さない、異空間のオペラのイメージを思い描く。

「結局、私も学んだんだけど、みんなアンナ・ハルプリンの影響なのね」「ほとんでマース・カニングハイムのところで学んだ人たちでしょう?」「からだはカニングハイムのところで作って、精神はアンナ・ハルプリンのところで学んだんです」「ニューヨークとサンフランシスコは離れていますね」「みんなサンフランシスコまで出かけて行ったんです。まあ、セラピーですね。海辺で波のしぶきを受けながら裸で踊るんです。映像があります! それもDVDにして送りましょう」。

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